活動レポート

あとりえ企画 シリーズ 環境を考える 第4回 『水と緑の国 日本』

2005年12月24日

〔富山和子さんプロフィール〕

評論家。日本福祉大学教授。立正大学名誉教授。
水問題を森林林業の問題まで深めたこと、また「水田はダム」の理論でも知られ、「日本のレイチェル・カーソン」とも呼ばれ、その総合的な研究は「富山学」と呼ばれる。著書『水と緑と土』は環境問題のバイブルと呼ばれ、三十年を越えるロングセラー。自然環境保全審議会委員、中央森林審議会委員、河川審議会専門委員などを歴任。水の文化研究所理事長。

「富山和子がつくる日本の米カレンダー、水田は文化と環境を守る」を制作、農林漁業を守るキャンペーンを続けている。


富山先生は、水の研究から始めて、林業・農業へといきついたそうです。
水を作り出すのは土。その土の形成者・生産者が森林です。そして、その森林は、日本列島においては、天から来たものといったなまやさしいものではなく、まさに「労働の産物」なのです。日本の悪条件、地形が急峻であり、集中豪雨や地震などがありながら、国土が成り立ってきたのは、森林が土を作り、農業が水を使い、つまり水をそこにはりつけてきたから。人々が木を切っては植え継いで、緑を絶やさないできたからなのです。日本の自然は、働く人々が汗を流し血を流して作ってきたものなのです。

講演の様子 それだけに、土というのは、民族の存亡に関わる問題であり、山村の過疎は現在の日本の最大の課題となってきています。土を絶やさなかった文化の国、日本。その文化の土台は農林漁業をやっている人たちです。自然を守るということは、山村に残り一生懸命にこれらの仕事をすることで自然を守っている人たちを守ることなのです。都市生活者である私たちも、本来ならば、山村へ行き、その土地に木を植え、自然を守ってからその恵みである水をいただくべきなのだということを改めて知り、しみじみと考えさせられました。

富山先生は、最後に、都会の子どもたちに伝えたいこと、それは「自分は誰のおかげで生きているのか」をよく考えてほしいと話されていました。たっぷり二時間の講演でしたが、水について、土について、自然について、私たちに知ってほしいことや考えを改めてほしいことがまだまだたくさんあるという様子がひしひしと伝わってきました。


荒馬座による『花田植』 第二部では、米づくりが育んできた芸能として、荒馬座で『花田植え』と『荒馬踊り』、そして『津軽三味線』を上演しました。

また、座友で荒馬座の作品の音楽も担当していただいている尺八奏者の宮田耕八朗さんに 『鶴の巣ごもり』を演奏していただきました。宮田さんは、常々日本の農業にも深い問題意識を持っていて、農業をテーマとした『田毎の月』・『矢部の里』などの作曲でも知られています。


最後に、2006年『日本の米カレンダー』の写真を改めてスライド上映。富山さんが詩を朗読し、そこに宮田さんが尺八の伴奏を入れるという贅沢な企画もおこなわれました。日本の原風景をバックに宮田さんの尺八の音色が響き、富山先生の思いとともに、あらためて日本に暮らす私たちが、日本の自然を守ることの大事さと、自然と人々に育まれた民族文化に携わるものとしての使命を感じさせられました。

(「あとりえ企画」担当・小林幸子)


宮田耕八朗さんによる尺八演奏 宮田さんの尺八伴奏による富山さんの語り


いただいた感想

  • 「米づくりが自然保護とたいへん密接な関係があることがよくわかりました。農林水産の連携が基本となるような日本になればいいなと思います。先人の森を守ってきた苦労が無にならないように、都市に住む私たちもお手伝いできればと思います。」
  • 「富山先生の話を伺って、『水のあるところに文明は栄える。』ということばを聞いたのを思い出しました。しかし、『ただそこに水があればよい。』のではないのだなあとしみじみ思いました。自然の恵みと昔からの人間の労働に感謝感謝です。〜、お米が食べたい!」
  • 「水・米・土それぞれにについて、おぼろげながら考えて知っていたことが、今日しっかり結びついて知識となったという気がします。何か行動を起こしていかなくてはいけないという気持ちを強く持たされるような話が聞けてとてもよかったです。」
  • 「水と緑と土がつながる自然のしくみ。このしくみを崩すことも守ることも人間の手であることは、この日本に生きるものとして知っていなければならないと思った。林業が教科書から削られていること、自給率22%の現状、とても情けなく思う。本も読んでみよう!日本にまだまだ残る日本の自然をむだなく利用した人々の暮らしから編み出された知恵と工夫の結晶を見に出かけたくなった。」