活動レポート

あとりえ企画 シリーズ 平和の集い 『ベトナム帰還兵が語る本当の戦争』

2004年11月22日

年に一度、荒馬座の稽古場でおこなわれる『平和のつどい』。
2004年は、平和活動家のアレン・ネルソン氏を11月22日(月)にお迎えしました。

アレン・ネルソン氏は、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。1965年に18歳で海兵隊に入隊し、地獄のベトナム戦場を体験。帰還後も戦争後遺症に長く苦しみ、治療に18年もの歳月を要した。23歳の時、小学生に戦争体験を話したことを機に講演活動を始める。とりわけ1995年の沖縄少女暴行事件に衝撃を受け、来日。現在日米両国で精力的に講演活動をおこない、戦争の現実・生命の尊さを訴え、沖縄からの米軍基地撤去を呼びかけている。

元海兵隊員としての体験を語るネルソンさん
この日も約80人の参加者を前に淡々と語るネルソン氏。その中にも時折浮かべる怯えたような表情やしぐさからも『本当の恐怖』が垣間見えるようなリアルなお話でした。

『戦争映画では、ハンサムなヒーローが登場し女性と子どもを救うが、戦場では自分しか救えないし、殺すことのみである。そして映画では死体の臭いはないが、戦場には耐えられない臭いがある。これが本当の戦争だ。』と語り、最後に『1996年に来日した時に、日本の憲法第九条を紹介された。それを読んだ時、ガンジーかキング牧師が書いたと思った。日本はこの九条のおかげで戦争を知らずにすんでいる。九条のおかげで守られてきたあなたたちが今度は九条を救う番だ。世界平和はアメリカからではなく日本から、あなたたち一人一人から、憲法こそ戦争を止めさせる力になる。』と、今の世の中の動きの下で深く考えさせられるメッセージに、会場からも大きな拍手が湧き起こりました。


矢崎光晴さんと荒馬座のメンバーによる『蒙古踊り』 講演の後は、『私はブルースが好きです。皆さんと一緒に歌いたい!』とギターを抱え、得意のブルース『戦争はもういやだ』の原曲『Down by the riverside』を披露。アメリカの奴隷が、主人から逃れるために川を泳いで渡る時に歌ったもので、すべての怒り・憎しみを岸に置いて行こう、暴力も憎しみも戦争ももうしないと、涙を浮かべ心を込めて歌っていただきました。

荒馬座員も昨年に引き続き、中国での加害体験を『蒙古踊り』とともに伝えてきた日中友好協会の故矢崎新二さんの息子さんの光晴さんと共に『蒙古踊り』を共演。体験を受け継ぐことの意味を改めて考える機会となりました。

(金子満里)

いただいたご感想

  • 「ネルソンさんが何度も口にされた『本当の戦争』ということばとその実態に胸がつぶされそうになりました。十八年間もの長い間、精神的な戦争の後遺症に苦しみ、みごと生還されたことに、そして私たちに向かって勇気ある発言をして下さったことに感銘を受けました。ネルソンさん、本当にありがとう。日本国憲法第九条を守ってほしいというメッセージをしっかりと受けとめます。今日の話をしっかり受けとめ私も伝えていこうと思います。」(53歳・女性)
  • 「『戦争を知らない子どもたちの顔は不思議な力を持っている、と思うのは憲法第九条の力だと思う。』という言葉が印象的でした。」(39歳・男性)
  • 「『世界平和をつくるのはひとりひとりだ。』という言葉がとても重く心に残りました。憲法第九条のこと、自衛隊派兵のこと、平和のことをどこか人ごとのようにして、その問題について、しっかり考えたり、知ったり、意思表示をしないことも、戦争をつくることになるのだなと思い、日々の自分を反省しました。第二部は、平和への願いが踊りに込められていて、ひるまない何かを感じました。最後のネルソンさんの歌は、人として歌っていくという思いが伝わってきました。」(27歳・女性)
  • 「まずは、母として子どもたちを守っていくことの大事さ、今一歩間違えればあんな恐ろしい世界へ巻きこまれてしまうのだという現実をひしひしと感じました。自らの口を割るのも辛い、思い出すのも苦しい体験をとつとつと話してくれるネルソンさんの心の中を思うと涙が出ます。戦争という言葉が、映画やごっこ遊び等を通して、私たち戦争を知らない世代にとって、何となくかっこいいとかおもしろい的なニュアンスで一人歩きしてしまっている今、話を聞いているだけで、とても怖くて、悲惨で、むごくて涙が出る思いだったのですから、戦場におもむき現場を目の当たりにして、人殺しをせざるを得なかった兵士たちの思いは想像を絶するほどでしょう。どうしても私たちは憲法第九条を守る義務があると、この日ほんとうに心の底から思いました。」(40歳・女性)
  • 「私も憲法第九条に守られた戦争を知らない子どもです。戦争を知らずに育ち、大人になり、戦争を知らない大人になり、そしてどこかの戦争で殺されていく子どもを見殺しにしている大人になり、ネルソンさんが子どもに聞かれた質問を、私は私に問わねばならないと思うのです。私も人を殺しているのではないかと思うのです。そしてこのままでは、私たちの子どもに憲法第九条を残すこともできなくなってしまう。
    私もネルソンさんのように、子どもたちの問いに向き合って生きていきたいと思うのです。平和の担い手の一人となるために。矢崎さんのお話、蒙古踊り、感動しました。お話と踊りが一つのものになっていることに感動しました。」(30歳・女性)
  • 「ネルソンさんの話を聞きながら、時折浮かべるおびえたような表情やしぐさなどから『本当の戦争』が少し垣間見えたように感じた。そんな体験を経てなおユーモアと誠意を持って語り続けるネルソンさんの人間性にふれたのが嬉しかった。」(男性)
  • 「『戦争は頭でなく、体全体でないと理解できない。』と言うネルソンさんの言葉に衝撃を受けた。憲法第九条ということば、精神的なものによって、日本の子どもが守られてきたということを改めて感じた。第二部の沖縄の歌や踊り、蒙古踊りを観て、本当の良質な芸術やまつりこそが、平和への道だと感じました。」(女性)

荒馬座によるエイサー