活動レポート

『絆』フェスティバル―ふるさと霊山ここに生きる【福島県伊達市霊山町】

2013年11月17日

2013年11月17日に福島県伊達市霊山町で、「『絆』フェスティバル―ふるさと霊山ここに生きる」(「伊達市ケーブルテレビ」サイト)がおこなわれました。
霊山の希望を芸能に託して、町の人たちと荒馬座で創る百年後の子どもたちに手渡す未来への祭り、市民参加の舞台企画。構成・演出を荒馬座で担当しました。

▼写真:吉田由子

届けフクシマの願い―百年後の子どもたちへ 制作担当 金子 満里

2013年5月より金子と宮河が月2回霊山に通い、『りょうぜん里山がっこう』『霊山太鼓保存会』を始めとした町の方々と、唄や踊りや太鼓の稽古をしながらこの企画を作ってきました。

第一部では「風と水と天蚕の町に」と題して、原発事故に戸惑いながらも、ここふるさと霊山に生きていこうと、再生に立ち向かっていく人々の姿を、霊山のヤママユ「天蚕」のまなざしを通して語る合唱舞踊構成。
 荒馬座も「東京の祭」と題して、2000年の三宅島の雄山噴火の際の四年半に及ぶ避難生活を余儀なくされた経験を持つ三宅島の人たちのふる里再生の思いも重ねて、霊山へのエールの気持ちを込めて、三宅島の太鼓、そして獅子舞を披露しました。

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第二部は、「霊山太鼓と荒馬座で作る未来芸能」。

霊山太鼓保存会遠征組の清野修平さんが座員宮河とともに「風水清めの舞」を披露。この舞は公害の原点の地水俣に伝わる棒踊りと被爆地広島に伝わる神楽を元に宮河が創作したもの。霊山を修行の地とする山伏の姿で、目に見えない魔物(=放射能)を祓い、霊山の風と水を清める渾身の舞を演じました。
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続いて、霊山の天狗の相撲場という岩の名前にちなんで同じく遠征組の佐藤しのぶさんが「一人相撲」を演じ、客席から笑いと歓声を誘いました。
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座員による風刺を交えた相馬の「壁塗り甚句」、遠征組の皆さんと荒馬座との「霊山太鼓の叩き比べ」から、出演者全員で「2011・霊山廻り打ち」、みんなで霊山太鼓の基本のリズム「ウドーンドンドン ドドーンドンドン」を廻りながら叩き、ふるさとに生きるひとつの輪を表現しました。
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3歳から中学生の子どもたち、保存会の北組・遠征組の若者、若いお母さんや人生の先輩のご婦人方、総勢百名での廻り打ちに、客席からあたたかい拍手や手拍子が送られました。最後は、出演者全員が集まって500名の観客と一緒に、テーマソング「風に願いを水に願いを」の合唱。霊山の自然の美しさと誰もが聴いて育った霊山太鼓の響きに思いを馳せて唄声を響かせました。
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5月から11月の本番を迎えるまでの半年、月2回霊山に通い、始めの頃は人がなかなか集まらず、よそ者でしかない私たちの力不足を感じることが何度もありました。それでも公演当日、放射能に負けないでふるさとに暮らしたい、地域の絆をもう一度つなぎ直したいと願い、集まった100名の出演者の皆さんの表現は生き生きと輝きに満ちあふれていました。
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震災からもうすぐ三年、決して福島の人々の平穏な暮らしは戻ってはいませんが、この日の祭りが震災の記憶を語り継ぐ一助になりますように、そして霊山の人たちの心を結ぶ一歩になることを願いながら、東京に住む荒馬座もまた福島に生きる人々の思いを芸能に託して伝え続けていこうと思います。百年後のふるさとの夢を子どもたちに手渡すために...。

たくさんの力が集まって 「絆フェスティバル」実行委員長 大友 靖子

「たんタりんこたんこタンこ たんタりんこたんこタンこ」これは荒馬座宮河さんが書いた今回の舞台のテーマソング『風に願いを水に願いを』の一節。私たちの住んでいる町は太鼓の町。二〇一一年に放射能が降ったこの町に、荒馬座の皆さんが元気に輝く新しい風を起こして下さいました。宮河さんの書いてくれた上演台本は『ふるさと霊山ここに生きる』。自然に生息する「天蚕」という山かいこになりきって演じるというもので、演者はまさしくここに生きている私たち。萌葱色の半仮面を着け風車を回して...、これがなかなか難しい。風を受けて風車を回す、素早く歩く足さばき、姿勢、目線、隣の人を感じて...。それらは合唱団にも求められ、にわか役者になりきって演じ歌う、唄あり、太鼓あり踊りありの舞台。
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350年を越える伝統ある『霊山太鼓』も伝承は大切にしながらの『二〇一一霊山廻り打ち』、ふるさとはひとつの思いで輪になって叩くという未来へつながるアレンジ曲に挑戦。月二回のペースでワークショップを重ね、子ども・若者・年配者の太鼓の輪が大きなひとつの輪になっていくというもの。総出演者は百名近くにもなりました。子どもたちさんと追いかけっこを楽しみにするくらい親密に打ち解ける中、大人たちは大人になってからこんなに厳しく叱られたことがあっただろうかという場面も幾度となくあり、半年が過ぎて本番を迎えました。

私たちが歌った合唱曲の一節、♪一人でできることはたとえちっぽけでもたくさんの力が集まったとき変えられる/ふるさとを甦らせるのはこの時代に生きる私たち♪出演した人たちも観に来た人たちも、あんなに笑顔になり心から楽しんだのは本当に久しぶりでした。あの日あの時、皆と一緒ならこれからも何かやれそうだなって思えたんです。荒馬座さん、本当にありがとう!
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上演にあたって 構成・演出 宮河 伸行

あの日、『魔物』は風と水の中に潜んでこの町に運ばれてきました。僕のふるさとである熊本県のミナマタでも57年前に『有機水銀』という魔物が海の中で暴れました。魔物の特徴は、人間の体だけでなく地域の絆も破壊するということです。ミナマタでは今、『2001水俣ハイヤ節』という創作の踊りを子どもたちが踊ることを通して『もやい(絆)づくり』が始まっています...。
350年の歴史を有する 
『霊山太鼓』という郷土芸能の根付くこの町で 
風と水を祓い清める新しい未来芸能を創ってみたい 
百年後の子どもたちから 
「どうしてこんな芸能が出来たの?」と尋ねられた時 
百年前に風と水に潜んでいたあの魔物のことを
『昔話』として語り継いでいきたい 
そして 百年後のふるさとの希望を 
今日の舞台で繰り広げられるであろう様々な芸能に託したい 

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