楽(がく) ‐明日への息吹‐

※この作品は上演を終了しました。

2009年度 厚生労働省社会保障審議会特別推薦児童福祉文化財


まつりや芸能・昔話は、自然を讃え、生きることの喜びや稔りへの願いと感謝を込めて伝えられてきました。
人間の生命に新しい力を与えてくれる、まつりの広場「楽」(あそび)の庭。
そこで存分にこころ遊ばせ、身体をひらき、新しい息吹を体中に満たしてほしい。
そんな願いを込めて、過去と未来のいのちが出会う楽しみの時。
「楽」の始まりです。

■作・構成 荒馬座
■演出 金子満里
■美術 下野正晃
■音楽 安達元彦・岡田京子


>> チラシ画像(別ウインドウが開きます)

上演プログラム

【第一部】

  • 寄せ楽
    陸の船
  • 創作神楽
    「土は生きている」
    〜米作りの始まり〜


    (休憩10分)
【第二部】
  • 早苗の楽
    早苗の神胴上げの儀
  • 水の楽
    つく舞
    傘踊り
  • 稔りの楽
    竿灯
  • 山の楽
    秩父屋台囃子

※上演時間80分(休憩10分含む)。
※演目は変更することがあります。

「陸の船」 「創作神楽」1
「陸の船」 「創作神楽」
…刀を振りかざして土の神に襲いかかる龍王
「創作神楽」2 「創作神楽」3
「創作神楽」
…土の神に斬りかかった龍王は龍にされてしまいます。
「創作神楽」
…龍になった龍王は、水の神(娘)に襲いかかり、呑み込んでしまいます。
「創作神楽」4 「創作神楽」5
「創作神楽」
…土の神は水の神を救い出し、龍の角を抜いて龍王に戻してやり、刀を鍬に代えて田を耕すことを教えます。
「創作神楽」
…人間に戻った3人(水と土と火の神)が、黄金の稲穂の中、米作りへの感謝といのちの喜びを込めて踊ります。
「早苗の神胴上げの儀」 「つく舞」
「早苗の神胴上げの儀」 「つく舞」
「傘踊り」 「竿灯」
「傘踊り」 「竿灯」
「秩父屋台囃子」 「フィナーレ」
「秩父屋台囃子」 「フィナーレ」

メッセージ

制作より

いのち輝かせて生きてほしい!

『楽‐明日への息吹』は、今の暮らしではなかなか味わえない神楽をはじめ、米作りに関わる芸能をつづって、子どもたちと一緒に、まつりや芸能で楽しいひとときを作る作品です。
日本の伝統的な音楽と舞踊が融合した演劇でもある神楽のダイナミックな面白さ、風をまきおこす陸の船、心躍る太鼓や踊りの数々…。体育館は神楽殿になります。祖先と自然の神々に感謝し、人間の生命に新しい力を与えてくれるまつりの広場、楽(あそび)の庭。そこで存分にこころあそばせ、身体を開き、新しい息吹を身体中に満たして、いのち輝かせて生きてほしい。そんな願いを込めて、過去と未来のいのちが出会う楽しみの時『楽(がく)』の始まりです。

(制作/貝塚理子)

作・演出より

手伸(たの)しい心の追体験を!

日本全国のさまざまな芸能にふれている時に、ふと今自分は時間を越えて古代の異次元に迷い込んでしまったのではないかと、そんな感覚になることがよくある。

過去の時間を共有させてくれる芸能の源流―それが『楽』の世界だ。芸能の源は、まさに神様との交感だと言われている。自然の中には、山の神、海の神、水の神など八百万の神がいて、その神のお告げを伝える媒体として、神懸かりをする人が現れた。
そうした目には見えない聞こえない万物の生命と対話し、自然に対して限りない敬虔な心を持ち、限りない繊細な感性で人間や自然や対峙する時、芸能、「神楽」の役割は大きかった。

「カグラ」の語源は「神座」(カミグラ)。一口で言えば、神座を設けて神様を招き、祭る人々や共同体の生命・健康・豊穣を願う芸能で、「楽」は鎮魂の意味から始まっているが、中世の中頃までには、子どもたちの遊伎や祭りの意、また「身も心も安らかで苦しみのない世の中を願い求める」という意味として広く使われていた。
人々が、日常の苦しみや煩わしさから、ふと解放され、緩やかに過ごす時をそう呼んだのだろう。

また、「楽し」という和語は「手伸(たの)し」。日が射して世界が光り輝き、身も心も晴れ晴れとして浮き立つように楽しく、自然に手が伸びて「手伸(たの)し」く身体が動きまさしく踊りを踊る状態を言う。

人々は日常の苦しみから解き放たれるように遊びに夢中になった時、何か神聖なものとの出会いを感じながら、自然と協和し、共同体の中の「結」=自治の精神を育んできた。神楽に回転、跳躍の動きが多いのは、「身も心も解き放たれ」、神聖なものとの出会い、「自然との一体感」を追い求めるがゆえの行為であった。

そんな芸能の源流をとことん身をもって体感しながら、現代を生きる人々の「気」に息を吹きかけ、明日を生きる力を与えることのできる芸能者でありたい。そして、自分自身の心と身体も「解き放たれ」て、人や自然に寄り添うことのできる人間でありたい。

解き放たれた心と身体が合流した時、人間同士はつながりあい、響き合う。私たちの祖先が夢中になった足取り、手振り、「手伸(たの)しい」の心を追体験し、現代に生きる人々とその響きを共有したい。生命の重さや生死のありようが感じられなくなっている時代を乗り越えて、明日を生き抜く為の心の栄養と励ましに少しでもなれるように、この作品を上演していきたい。

この作品は、美術の下野正晃さん、音楽の安達元彦さん・岡田京子さんを始めとした各分野の専門家の方々のご協力をいただいて完成させることができました。
中でも、この作品の中心演目で、今回初挑戦の『創作神楽』は、広島の『有田神楽団』の方々に何回か手ほどきを受け、神楽の所作や台本の内容についてもいろいろとアドバイスをいただき、『有田神楽団』との協同創作として創り上げることができました。
また、第2部の開幕『早苗の神胴上げの儀』は、学校の先生や子どもたちを胴上げします。あれこれ試行錯誤した末に、最近注目されている「ナンバ」の身体の使い方でやってみようということになり、「ナンバ式骨体操」で知られる『心身技術研究所』に皆さんに「ナンバ」の基本から「胴上げ」までの手ほどきを受けました。腕力や力づくではなく、身体全体の使い方で、負担をかけずに持ち上げる方法を丁寧に教えていただき、最終的には体重80キロを越える大人までを軽々と胴上げすることができるまでになりました。

『楽-明日への息吹』では、特に『創作神楽』と『胴上げ』にご注目下さい!

(演出/金子満里)

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レポート・ご感想

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