活動レポート

次なる「えん」へ向かって―荒馬座第33期研修生修了発表会【東京都板橋区】

2015年12月20日

2015年12月20日に東京都板橋区の成増アクトホールを会場に、荒馬座第33期研修生の修了発表会をおこないました。

今回のテーマは、「えん―ここでつながる心、ここからつなげる想い」。さまざまな「えん」、縁、演、援、園、円、宴、それぞれの思いを込めてこのテーマが生まれました。18名の研修生がそれぞれの地域や職場でつなげた「えん」から、会場に満席の約500名のお客さんを迎えることができました。

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次なる「えん」へ向かって 第33期研修生 担当講師 中村志真

2015年12月20日、成増アクトホールにて無事に修了発表会を終えることができた。
研修生にとっては開講式からの9ヶ月間の集大成として、また、ここで出逢った最高の仲間たちとの大切な1日として18名誰も欠けることなく、溢れんばかりの笑顔がまぶしい1日だった。

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今期の研修生は19歳から65歳までと年齢幅も広く、身体的な面はもとより、チカラワザだけではない芸能とのつきあい方を考えた一年だった。 稽古場のドアを開けたら仕事の事、家庭の事は一切忘れて打ち込んで欲しい。今、ここにいる仲間たちとの受信・発信に心と体を研ぎ澄ませて欲しい。...と言葉では伝えるものの、さて中身はどうしていいやら、...実は私自身が、このやり方で大丈夫か、伝わっているかとおそるおそる手探りしていた時期もあった。

 しかし、いったん稽古となりタイヤを叩き始めれば、中高年の頑張りに若者が負けじと声を出し、誰も彼もがノッていく高揚感。ソーラン節の櫓漕ぎだけで、回遊魚のように稽古場をグルグルと回って踊り続けていた時も、声を出し檄を飛ばす仲間に励まされ、さらに重心を落とし、かけ声を交わし漕いでいく姿。ヘトヘトになりながら、最後にはみんなやり切った笑顔になる。
荒馬踊りも、経験のうちと男性がハネトの役で女性が馬の役になった時、我が馬に駆け寄る男性陣の可愛らしさ、二つ跳びの女性らしさに、こんなにも心を動かして踊る人たちがあったんだと、思わず泣けてきてしまった。18人の思いが溢れ出てぶつかり合って感じ合うその姿に、久しく私自身が忘れていたものを激しく揺さぶられた思いもした。

 できない自分を自分自身が認め、周りに助けを求める。こんな事は大人になればなるほど蓋をしてしまう。でもこの研修生という場では、できない自分に涙する仲間へ、声かけはもちろん稽古でとことん付き合う。うやむやだった口伝が叩けた瞬間、出なかった笛の音が出た瞬間、喜び合い更に次へのステップへと誘う。そんな関係ができた。

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  10月には岐阜県恵那市串原の中山太鼓のお祭り「中山神社大祭」にほとんどのメンバーが参加できた。「荒馬座の研修生として」芸能を丸ごと体感できる貴重な機会だった。中山神社の境内で、人と人とがギュウギュウになって作り出す高揚感、一体感はその場で実際に押されまくって実感できること。言葉抜きの楽しさ。しかしそれ以上に、串原の地域の人たち、『中山太鼓保存会』の人たちの優しさ、温かさ、私たちよそ者をも受け入れて下さる大きさも存分に感じ、芸能が生まれる土台ごと感じることができた。帰ってきて、参加できなかった仲間にあれもこれもと伝えずにはいられない研修生たち。すべてが終わった後「ジツハアレ、ツラカッタ...。」と正直に笑いながら言える関係になった。こうした得がたいたくさんの経験もあったから、「できない...。」「うまく叩けない...。」などといろいろとぶち当たって悩んだけど、33期といえば中山太鼓!と全員が言える演目になった。

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  発表会のテーマ「えん―ここでつながる想い・ここからつなげる心」が決まるまで何と時間を費やしたことか。こんなにもこだわり抜いて選んだ、18人それぞれの「えん」とアツーイ想いは、発表会の舞台の上からピカピカ光っていた。 
 修了式で研修生の最年長のメンバーが、「自分はこの年齢で研修生を終えた。これは荒馬座の歴史に名を残した!」と話してくれた。
うん、確かに!!そして、33期のひとりひとりがこの荒馬座の歴史に名を残したんだよ。ある意味みーんなレジェンド!

 今気がつけば、稽古場で私が心配していたアレコレは、モノの見事に各々が克服し、次なる「えん」へ向かっている。 稽古場の中では、老いも若きも男も女も関係なく、汗を流して心も体もぶつけ合い泣いて笑った。
やっぱり民族芸能はこうでなくちゃ!と振り返れば私自身が研修生の原点を再確認した、そんな忘れられない一年になった。

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上演プログラム

プロローグ―中山太鼓
ぶち合わせ太鼓
ソーラン節
ぶち合わせ太鼓
篠笛
荒馬踊り
貝殻節
中山太鼓

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